声に出して読みたいKindle洋書
先日も少しだけ紹介したけれど、新型Kindleがプライム会員なら4,980円で買えるという価格破壊をするものだから、電車でもKindleで読書しながら通勤しているひとを以前より多く見かけるようになった気がする。もちろん紙の本が大好きだっていうひとは未だにいるしぼく自身がそうだったけれど、使ってみるとその便利さゆえにもう紙の本に戻ることができない。
さて、今回はそんなKindleの中でも「洋書」に特化してオススメをしていきたい。なぜ洋書なのか、理由はいろいろあるので追って書いていくけれど、概してKindleなら英語で書かれた本を読むというハードルを格段に下げてくれる。一度読んだ邦訳された本も、また原典で読めば違った感想を持つ。そういうわけで、「声に出して読みたい」という条件をつけたときに圧倒的にオススメできる洋書を日本のKindleストアで販売されている366万冊から17冊ピックアップして紹介する。
ちなみに、Kindleではドイツ語やフランス語、スペイン語など、さまざまな言語の本が簡単に購入できる。「洋書」というと定義が広くなってしまうので、ここでは「英語」で販売されているKindle本を紹介していきたい。もちろん、ほかの言語を学んでいるひとはその言語で読むことが一番の学習方法だと思うので、積極的に探してみてほしい。
なぜKindleで洋書?
本編に入る前に少し触れておきたいのは、なんで「Kindleで洋書なのか?」ということ。このメリットをしっかり理解しているかどうかだけでこれから紹介する内容の価値の伝わり方が月とスッポンなので、その理由を5つ紹介していきたい。
1. ペーパーバックを手に入れるのは意外と難しい
ぼくが上京してきたのは2008年のことだった。ぼくの地元は岐阜県なのだけれど、洋書を購入するには名古屋の大きな書店まで出向かなければならなかったし、交通費も時間も労力もかかる。上京してからも、意外と海外の本を輸入して販売しているところは少なくて、新宿の紀伊国屋や池袋のジュンク堂にはワンフロア洋書コーナーが揃っているけれど、そこまで行くのはかなり面倒だった。
海外の本は最近だとハードカバーよりも圧倒的にペーパーバックが多い。ペーパーバック本はハードカバーに比べて安いイメージがあるし、実際に(相対的に)安く売られているのだけれど、輸入コストなども価格に入れられているので、結構値が張る。そういうわけで、海外の本を手に入れるのは、時間もお金も労力もかかるので、意外と難しいのだ。
2. 発売後すぐに読める
Amazonで輸入本を購入するということもやったことがあるけれど、それでも注文から配送まで時間がかかる。最近のネットショッピングは時間勝負なところもあるけれど、やっぱり読みたいと思ったときに読める環境が最高だ。洋書は国内で卸されている本に比べて配送時間がかかるものも多い。それをKindleならWiFi環境さえあれば発売後すぐに読むことができる。
3. Kindle価格で読める
コストの話をしたけれど、Amazonでは紙の本の価格とは別に「Kindle版」の料金が定められていて、概してKindle版は一般の書籍より安い。
以前ディカプリオ主演の映画でも話題になったスコット・フィッツジェラルドの『The Great Gatsby』。ご覧のようにKindle版はハードカバーの10分の1以下と、Kindle版のほうが圧倒的に安い。
また、国内で出版された書籍だけでなく洋書も月替わり・日替わりセールをやっていたり、25,000冊以上の英語の書籍が無料で配信されている(英語も含めた「洋書」だと約50,000冊もの本を無料で読むことができる)。
4. Kindleは薄いのでかさばらない
ペーパーバックでもハードカバーでも、分厚い本が多いのでカバンに何冊も入りきらないことが多い。日本の文庫本サイズが普及すればなあと思いつつも、学生時代はお気に入りの洋書たちをカバンにパンパンに詰めて持ち歩いていたものだ。その点、Kindleは端末が1つあればそれを持ち歩くだけでいい。Kindleを開けた瞬間に購入した洋書が読み放題だ。充電も持ちがいいので、毎日する必要がないのもいい。洋書は基本的に大きくて重いので、海外でもKindleが流行る理由がわかる。
5. 語学の勉強になる
Kindleの用途は幅広く、日本だと本だけでなくコミックも読むことができるのだけれど、意外とビジネスパーソンでKindleで洋書を読んでいるひとは少ない。TOEICやTOEFL、IELTSや英検などの資格試験対策だけでなく、教養として海外の古典に原典で当たって読んでみるのも、Kindleの使い方のひとつだ。しかも、良書だと美しい言い回しの英語が非常に多いので、ぜひ声に出して読んでほしい。声に出すと、音のリズムや英語の構造を身体で体感することができる。
また、Kindleには「Word Wise」という機能がついていて、簡単な同義語はその場で確認できるので、Kindleと別に分厚い辞書や電子辞書を持ち歩かなくてもいい。使い方は簡単で、分からない単語をタップして反転させるだけだ。Kindleを持っているのにこうした機能を使わないのはもったいないので、ぜひKindleで洋書を読むことに挑戦してみてほしい。
声に出して読みたい17冊を発表するよ
そういうわけで、洋書を読むならKindleに限る。分厚い割に細かい字で、紙の質がイマイチでざらざらした藁半紙の手触りを楽しむのもいいけれど、どんな本でも自分の読み慣れた行間や文字サイズで読めるのもKindleで洋書を読むのにいいところでもある。ここからは、ぼくがぜひ声に出して読むのをおすすめする17冊を紹介していく。
ちなみに、まだ私には洋書は早いと思ったあなた。そんなことはない。洋書がはじめてのひとでも選びやすいように「難易度」を付してあるので、英語に自身のないひとにこそぜひ挑戦して欲しい。
Because of Winn-Dixie
牧師の父に連れられて、フロリダのナオミという町に越してきたオパール。スーパーで偶然であった野良犬にWinn-Dixieと名付け、一緒に暮らすことになる。
オパールには母親がいなくて、ずっとそのことを寂しく思っていた。しかし、Winn-Dixieと出会ってから、年齢や性別の違う様々な友達と出会うようになる。みんなと出会うにつれ、オパールは自分だけが寂しい想いをしているのではないのだと気づく。
やさしい英語で書かれているので、洋書をはじめて読むひとや受験生にもオススメ。
難易度:
A Killing Frost
テレビシリーズ「フロスト警部」でお馴染みのFrostシリーズの最終作(著者は癌で亡くなってしまった)。主人公のジャック・フロストのコミカルでシニカルなギャグは、英語で読んでも面白い。若干のスラングはあるけれど、十二分に楽しめる内容となっている。
日本語の翻訳が出ていないので、ぜひ英語で挑戦してみてほしい。
難易度:
The Reluctant Jesus
まもなくミレニアムがやってくる、1999年。野球オタクで32歳にして大学を卒業したマンハッタンの建築家セス・ミラーは、母ともようやく離れて暮らし、妻とともに幸せな日々を送っていた。しかしある日、過保護な母親から重大な事実を告白される。お前は神の末子であり、キリストの再来なのであると。
最初は両親の気が狂いだしたのかと疑ったセスだったが、神から直接電話を受けることになる。神の説得により、セスはいやいやながらも救世主の役割を引き受けることになる。
宗教と絡めながらもコミカルでハラハラドキドキ。英語レベルは英検2級や大学受験レベルの語彙があれば十分に楽しめる。
難易度:
Stillness Speaks
「Stillness」とは本来的には「静止・停止・静けさ」などの意味があるけれど、本書でいう「Stillness」とはもう少し幅が広い。「音のないこと」であり「騒がしさを超えるもの」であり「永遠」であり「抱擁するもの」である。
仏教でいうところの「悟り」とは何なのかが分かりやすく箴言集の形でまとめられている。もちろん読むだけでなく実行することに意味があるけれど、どれもシンプルな内容なので取り組みやすいはずだ。
難易度:
The Scarlet Pimpernel
時は1792年のフランス。革命のさなか、オーストリアとの戦争が始まり、貴族・聖職者階級の人々が、ただ貴族である、聖職者である、というだけでオーストリアとの密通を疑われ、片っ端から捉えられ、ギロチンに送られようとしていた。
そんな中、鮮やかな手口と大胆な知略で捕らえられた貴族を救い出し、イギリスへ亡命させる謎の一団が颯爽と現れる。革命政府が血眼になって捕らえようとするが、そのたびに彼らはその追跡を振り切り、貴族達と共に逃げ去ってしまう。残された紋章からいつしかその一団は「Scarlet Pimpernel(紅はこべ)」と呼ばれるようになる。
革命期の社交の世界と暗躍の世界の両方を垣間見ることができ、あっという間に読み終えてしまう小説。日本人ではとても書けないような綺麗な英語で書かれていて、この作品こそ声に出して読んでみてほしい。
難易度:
Passion in Peril
いわゆる連続殺人犯のお話。主人公クロエ、その友人のモニカ、チャチャ、そしてクロエのボーイフレンドで刑事のハリーが次々と事件に巻き込まれていく。
この手のものは難しい英語で書かれているイメージがあるけれど、意外とすっきりまとまっていて読みやすい。ホラーやミステリーが好きなら是非読んでみてほしい。
難易度:
The Velveteen Rabbit
ある年のクリスマスプレゼントとして、ぼうやのもとにやってきたビロードうさぎ(Velveteen Rabbit)。木綿のビロードとおがくずでできたそのうさぎの人形は、子ども部屋の他の高価な機械仕かけのおもちゃの中で、肩身のせまい思いをしていた。あるとき、仲のよかった皮の馬から、子ども部屋には魔法が起こることを知らされる。
「もし、そのおもちゃをもっている子どもが、長い長い間、そのおもちゃを、ただの遊び相手でなくて、とても長い間、心からかわいがっていたとする。すると、そのおもちゃは、本当のものになるのだ」
ビロードうさぎは、自分も本当のうさぎになりたい、と思った。やがて時は過ぎゆく。
挿絵が非常に可愛らしく、英語レベルもそれほど難しくないため、非常に読みやすい。英語に自身がない人は、この本からスタートしてみてはどうだろうか。
難易度:
Into Thin Air
1996年に多数の犠牲者を出したエベレスト登頂隊にジャーナリストとして参加し、登頂に成功したのち無事に下山した作者が自らの経験をつづった登山ドキュメンタリー。実際の登山の様子を生々しく再現しながら、さまざまな国籍の登山チームとの軋轢、登頂成功への商業主義や名誉への欲求など、テレビの登頂番組では決して知ることのできないエベレスト登頂の様子がありありと描かれている。
人間の欲望、自然の脅威を感じる一冊。日本からは福岡のチームが登場して、若干親近感も湧いて読みやすい。
難易度:
The Art of Peeling an Orange
主人公のカーリー・ローゼンは、結婚する約束の日の前日に婚約者に振られ、「自分探し」の旅にでかけた。ここから、カーリーの波乱万丈な物語が始まるのだけれど、あるときはロマンス、あるときはミステリー、あるときは官能小説、あるときはサスペンスになるという筆者の万能な描写がすごい。
語彙レベルは高め(たぶん日本語で読んでもちょっと戸惑う部分が出てくるように思う)。何度も読み返して、あっそういうことだったのねというじわじわくる楽しみを堪能してほしい一冊。
難易度:
Martha Stewart's Cookies
この本は何か。…クッキーの本である(笑)
本当に美味しいクッキーの作り方が175種類も紹介されている。アメリカンスタイルからフレンチスタイルまで、さまざまなクッキーのレシピを楽しむことができる。材料も日本で手に入るものばかりなので、ぜひ本書を見ながらクッキー作りにチャレンジしてみてほしい。
きっとひとりでブツブツ唱えながらクッキーを作っているに違いない。
難易度:
The Shock Doctrine
ミルトン・フリードマンに代表されるシカゴ学派の経済思想、つまりマーケットメカニズム、自由貿易、民営化などの信仰がいかほどに全世界に悪影響を与えているのか、「Disaster Capitarism(災害資本主義)」という言葉を使って紐解いていく経済書。
もちろん内容自体が専門的な内容ではあるので読み応えはあるけれども、アメリカの近代国際政治の歴史を史実とともに追うことができるので、非常に勉強になる。
難易度:
Split Milk
さまざまな個性的なキャラクターが登場する短編小説集。この先の人生を決めるあの時の決断は、果たして正しかったのか、それとも過ちだったのか…。
12の物語はどれもユニークであっという間に読めるし、Mika Suganoの挿絵が想像力を膨らませてくれる。
難易度:
A Moveable Feast
ヘミングウェイが最初の奥さんであるハドリーと過ごしたパリでの日々を、数十年後に回想して書いた作品だ。
当時のパリには英語圏の文化人がこぞって訪れており、長期滞在していた。貧しくても幸せに生きていける、当時のパリの様子がありありと描かれている。カフェでゆっくりと過ごしたり、湯水のようにワインを呑んだり、時にはお金の心配をしたり、食事を抜かなければならないひもじさを味わったり。特にフィッツジェラルドとリヨンに行くシーンがとっても好きだ。
難易度:
Of Human Bondage
ウィリアム・サマーセット・モームの作品の中では『Moon and the Sixpence』と並んで本当に大好きな作品。主人公のフィリップはモーム自身がモデルとも言われている。
幼くして両親を失い、子どものいない牧師をしている叔父夫婦のもとに預けられたフィリップ。彼には足に障害があり、至る所でその自尊心を傷つけられた。叔父に勧められて入学した学校も辞め、パリで画家になるために修行をするものの、挫折。ロンドンに戻り医者を目指すが、恋愛にも報われず、無一文になってさらに苦しむ。しかし、最後に現れる運命の出会いで、最後に人生の本当の意味を知る。
表現自体は決して平易なものではないけれど、英語上級者でもこんな表現があるのかと、モームの世界に溺愛してしまうに違いない。
難易度:
The Shell Seekers
老齢を迎えたペネロープ・キーリングとすでに成人した3人の子どもたちが、自分の父が描いた「The Shell Seekers(貝を拾う人々)」という絵を見ながら、父やペネロープ自身の人生を回顧していく物語。単なる老婦人の思い出ではなく、3代に渡って人生をともに過ごした気持ちになる作品。
主人公のジェットコースターのような人生は、読んでいてドキドキする。第一次大戦と第二次大戦の狭間を生きるイギリス人の生活様式や思想も、きっと楽しめるはずだ。
難易度:
The Outsiders
貧困・労働者階級の若者グループ「Greasers」と、富裕層の若者グループ「Socs」の対立の狭間で揺れる、主人公ポニーボーイの葛藤を描く物語。スラング以外は読みにくいところもなく、10代の若者の感情を手に取るようにハッキリと描いているので、少しばかり歳をとってしまったと後悔しているひとにこそ読んでほしい作品だ。
難易度:
A Simple Plan
平凡に生きてきたこのぼくが犯罪に手を染めるなどありえない──。そう思っている「普通のひと」に、それは単なる幻想であるということを見せつけてくれる、インパクトのある小説だ。
リアルな心情の描写と状況設定が素晴らしい。普通の人間が殺人を犯す、ある意味で「浅はかな計画」は、ラストシーンで驚くべき展開を迎えることになる。
難易度:
まとめ
どの本にも独特な魅力があり、本当はもう少し紹介したかったけれど、「声に出して読みたい」という観点からなんとか17冊に絞り込んだ。難易度はバラバラに紹介してしまったけれど、Kindleなら「無料サンプルを配信」というボタンを押すと数ページ試し読みができるので、自分のレベルに合っているか、読み進められそうかを試し読みで判断してみるといいだろう。
ボタンひとつでKindleに試読データが自動で同期される。もちろん無料なので気になったものはどんどん試読してみよう。
しかしながら、まだKindleを持っていないのであれば、本当に買う価値があるので、素直に検討したほうがいい。そのままだと4,000円高くなってしまうので、プライム会員登録をしてからKindleを購入するのがベスト。なお、新型Kindleは7月20日発売開始なので、これを機にぜひ購入を検討してみよう。
今日のつぶやき。
夏バテで野垂れ死そうな哺乳類に水ではなく仕事をください
— ブライアンねこ (@x93mg) 2016年7月19日
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